「面白い人ほど会社を辞めていく」というよりは

「面白い人ほど会社を辞めていく」3つの理由 | ihayato.news
「面白い人ほど会社を辞めていく」なんてこたない、3つの理由。:impresario | impresario

これ、ちょっと思うところがあったので吐き出そう。

  • 情報統制
  • 時間・場所に縛られる苦痛

この二者はあんまり。どうも、どっちも話が極端な気がします。

ようするに、「過剰に情報統制」されたり、「過剰に時間・場所に縛られる苦痛」があったりするのがまずいだけなんですよね。

たとえば、ソフト開発してる過程ですごいライブラリ作って、これはみんなに使ってもらおうと思っても、まるごと権利が会社のものでちっとも発表できなかったり、メールで非同期通知で済むような話なのに、会議に出席して2時間かけて聞く必要があったり。過剰に拘束されない会社もあるし、いくら個人事業主でも(いや、代わりがいない事業主だからこそ)、すべてを知ったうえで守秘義務があり、時間・場所コストは確実に払う必要があり。

どっちも程度問題ですが、ただ唯一、絶対的に精神的な自由があるとは思います。それが、結果として情報・時間・場所に、氷山の一角として現れるのかなと感じます。

精神的な自由というのは、たとえば、自己責任で見積規模を即断できること。そうすると、持ち帰って会議して余計な意見が出るのを調整して... それでやっと翌日回答できる、みたいな時間消費をゼロにできる。そのかわり、早計すぎるリスクはある。けど「ごめんなさい見積感覚間違ってたのでもう一度金額言い直させて」と直接顧客に言える。もちろん、困ったやつだというレッテルを貼られるリスクは自己責任で。失礼に対して、結果で応えられる自信があるなら、顔出さなくていいという判断もでき、電話でもメールでもSkypeでもいい。会社のしきたりや営業的な圧力からも自由。会社のメンツのために、本当は納期に間に合うのに社内的な圧力で前倒し提出する空気になって、不本意な残業するとかもない。

この文脈でいうと、自由ってのは、裏をかえせば、自分の命と引き換えの責任でもあるんですよね。

  • 収入面でも会社にいる理由がない

これは、別の意味で気になりました。元記事の解釈はどっちも、個人でより稼げるから、というポジティブな意味で言ってますが、ちょっと自分の見方はそうではないです。

会社員をやっていて、もし、システム上どんなにがんばっても昇給しない/ライフプラン上必要な収入が得られるコースがない状況の確定が見えたら、いっそ全部捨てて、オウンリスクで博打を打ったほうがマシなんじゃないか、と考えざるをえなくなるシナリオもあると思うのです。この景気、というか、社会構造がこうなった結果じゃ。

「そんなこと言ったって独立して自分の取り分稼げるのか」という考え方もあるでしょうけど、みんながそう考え合ってる、自分で自分の食べていく分も稼げない人がぞろぞろと集まってる組織で、限られたパイを分けあっているのはもっとやばいんじゃないかと、そこに居続けたら、やっぱり人生赤字コース確定だよねと思うのです。

みんな、こんな、考えたらわかる問題はさっさとクリアして、もっと上のモチベーションで会社員をやってるんだろうか。会社員ってのはみんな、事業のビジョンを共有でき、所属組織の将来像がイメージできていて、それにコミットして責務を果たそうとしてて、かつ、ちゃんと必要なだけの収入を得て働いているの?

じゃあお前の手で会社を変えればいいじゃんという意見は、そもそも、既存の組織という足かせを抱えて事業を始めるよりは、自分でやり始めて、負債にならない人材を選んで新しい組織を作ったほうが有利だから無意味だし。
まあ、そこまでリスクを背負わずとも、別の会社に変わればいいじゃんというのが妥当なところなのかな。まさかどこにも転職できないような経験値しか積んでないわけでもないだろうに。

あー、もちろんこれは、サラリーマン金太郎的な出世がある大企業の社員の発想ではなくて、平凡な中小企業の社員の発想です。大企業なら、ブランドのラベルがビジネスを作るキーになるし、登っていく山もある。自分のスケールを超えて組織を動かせるだけの部下を持てる道もある。


「面白い人ほど会社を辞めていく」と、現象として見るよりは、「面白い人は自己責任の意識が高く、本質を見抜いていて、理屈でものを考えられるから、だましだまし経営している中小企業や労働搾取部門から辞めても、失業したというつまらないショックを受けず、どうやって生きていくか戦略を立てられる」と、プロセスを読んで、その実例も多くあると知る、ってことに意味があって、それを世の中の動向予測と自分の生き方の参考にすればいいんだなと、勝手に思いました。そもそもこんなの、人に言って何か影響してやろうってことじゃないし、そのまんま影響されるものでもない。