日本のソフトウェアと景気と輸出入とそして才能

最近の不景気なニュースを見てて、日本の経済は輸出と輸入によって成長していたことを改めて実感しました。自動車・家電と食品が弱ってきて初めて、ああやっぱりな、と。もし黒船が来てなかったら、円の貨幣価値がここまで高まることもなかったでしょうね。っていうか、そもそも円が外貨として取引されることもなかった、か。

ところでその経済成長の鍵である輸出入、ソフトウェアの産業ではどうだろうか。ものすごく主観的に、輸出と輸入について考えてみた。エッセイのつもりで読んでみてほしい。

輸出
海外に出せるものといえば、自動車や家電の組み込み系ぐらい。ゲームとアニメも強かったかもしれないけど、これまでの産業的内情はけして良いとはいえないし、今後についても、海外のクリエイターがジャパンチューニングを習得した結果が心配。
NECや富士通が世界でIBMやSunのように立ち振る舞うことはないし、日本発ではMicrosoftもGoogleも生まれない。よくも悪くも、日本のソフトウェアはAppleに似ていて、デザインの瞬発力こそ高いけど、持続力は弱く、けしてメインストリームに乗ることがない。

輸入
技術の輸入とは、ハッカー同士の交流だと思う。日本は、地理的にも言語的にも、完全に不利な立場にある。シリコンバレーに友達がいるSIerがどのぐらいいるだろうか。他のアジア地域も地理的に不利だけど、彼らには英語という装備が必要不可欠で、彼らはほぼ全員がインターネットで交流が可能だ。
資源についてはオフショア開発か。日本語が特殊な言語で、うまく英語にできないということ、また、独特な仕様を独自実装したがる文化だということで、カスタマイズの一般化も量産効果も享受できない。こんなことは言われすぎてて言うまでもないか。成功しているのはアニメだけで、それは、一目で品質チェックできるのが鍵になっていると思う。
WindowsやPhotoshop(ていうか、WebSphereOracleかな)を一方的に買わされる状況は、けして輸入とはいえないと思う。

変に長い分析になってしまった。ここはべつに大事じゃなかった、本当に大事なことは、「かくして、日本のソフトウェア産業は輸出入のパワーから孤立している」ということ。情報技術の世界では、インターネットという画期的な大陸間航行技術が普及しているのに、日本だけが鎖国を続けているみたいだ。ソフトウェア産業が国際的に日本最弱になるのは当然で、そもそも競争の土俵にいないんだ。ゲーム・アニメに加えて、最近Rubyというオリエンタル芸術が持ち出されたけど、産業的には何の強化にもなっていない。(Rails/Grails/Seaside/liftって、もう日本とは何の関係もないよね)

日本人がソフトウェア工学に弱いのは、けして、DNAに構造化が理解できない因子があるわけではなく、後天的なもののはず。ちょうど、明治以前に「自由」とか「権利」という言葉がなかったようなもの。本質的には、ソフトウェアでもプロジェクトXの力を発揮できるはず。輸出入以外にも、いろんな外部要因(ほか、情報系企業の成り立ちや、人事に関する習慣、「恐れ多い」「縁起でもない」という概念の存在)が付利にはたらいた結果出来上がったのが、今の日本の情報産業の有様だと思う。人の本質は変化しなくても、不幸が外部要因から来ていると思えば、そんなに悲観することはないんじゃないか、と思う。

最大の問題は「インターネット鎖国を解除するにはどうしたらいいかな」ってこと。それだけ。

ただ、本当に心配なのは、若年層のメンタリティがアメリカナイズされすぎて、算数できない(自力で解くという信念、粘り強さ、深い思索力が減った)子供たちが増えていること。これまでの日本人と同じだと思って考えてはいけないかもしれない。いっぽうで、ごく一部の天才ティーンも増加傾向にある。そこらじゅうで個人の能力差がますます大きくなるなら、いよいよこの業界も(いや、すべての業界が)現行の体制を維持できなくなるんじゃないかな。

直接輸出してないから海外の不景気の影響を受けないか? いやいや、不景気の結果として企業が傾いたとき、将来のIT技術への先行投資は、たぶん最優先で削減されるでしょうね。今使っているもので本当に必要なものだけを残して。他の業界より少し遅れてだけど、派遣30%カットどころではすまない衝撃波が、情報の産業にもやってくることが容易に予測できます。…って、経済新聞でもあるまいし、そこまでは言わなくていいか。