いろいろあって Elastic Cloud がオススメな件

MySQLのインデックスの代わりにElasticsearchを使おうと思い立っていろいろやってみた結果、Elastic社のホスティングけっこうオススメなんじゃないかってなった話です。これです:

www.elastic.co

経緯としては、AWSにのっけたサービス、とりあえずMySQLとRedisだけでやってきた仕組みが、そろそろノーキャッシュ新規クエリ単発で1秒以上かかる場合が出てきたというのがあります。

アプリケーションで決まったパターンの問い合わせだけやってるぶんには、問い合わせのパターン数だけ複合インデックを作ればいいし、負荷分散したければリードレプリカが簡単、ということでほとんどの場合MySQLでいいのですが...

  • MySQLは個別のインデックス勝手に組み合わせてくれない、全パターン定義しないといけない
  • 管理者が使う検索機能のよっては、想定したインデックスにうまくヒットしない条件になる
  • どうしてもORが必要でほぼフルスキャンになることがある
  • B-Treeの末端が5件だったり10万件だったりとカーディナリティの偏りがひどい
  • 日本語ではMySQLのフルテキストがつらい

などあって、状況に応じてMySQLのキメキメインデックスとElasticsearchを使い分けたらどうかと。

で、手元で検証したかぎりでは、これがものすごくうまくいきました。HTTPレスポンスの段階で10倍ぐらい速くなりました。日本語についても、形態素解析がんばらなくても、固定長のN-Gramでバラしてmatch_phraseで当てれば、SQLでいうLIKEと同じ結果を得られました。

あとは実プロダクトに使うだけで幸せになれるぜと、同じAWSがやっている Elasticsearch Service でやってみることに。ちょっと認証まわりでひと苦労ありましたが、どうにか接続はできました。

tanakahisateru.hatenablog.jp

プラグインとかはどうするんだろう、と思いつつも、まあ目的がB-Tree一本勝負の代替だし追加機能とかなくていいや、これでもう勝ったなと思うじゃないですか。思ったんですよ。けど現実は厳しいんですよ。

こんなんじゃ1リクエストで2回問い合わせたらもうMySQLフルスキャンと同じ...

@johtani さんに助けてもらいつつ...

Elasticsearchインデックス作成におけるパフォーマンス考慮事項 | Elastic

EBSとインスタンスストレージで比較したり、ノード数を減らしてみたりしたものの、ほとんど結果は同じ。まあ並列書き込みはすごく安定しているのでありがたいんですが、もしかしたら何か用途が間違っているのではないかと気付きはじめます。

Elasticsearchの結果に含まれる took 値は、クラスタ内で何ミリ秒で処理が終わったかを指す値、それと実際のHTTPレスポンスの差を比較するといいみたい。もしかしてこれ、ログとかを大量に書き込んで後でまとめて解析するためのサービスなのでは...

そこで試しに、同じVPC内に同等スペックのEC2インスタンスを立てて、2ノードのクラスタを組んでみたら、あっさり10倍性能出ました。めでたしめでたし。

では終わらないですよ。

これだけ助けてもらってトライアルしないとかダメでしょ絶対。ものは試しだえーい。

f:id:tanakahisateru:20160601175239p:plain

うわ、なにこれこんな簡単にクラスタ組めるの? スペック決めてTokyo選んでシャード数決めただけ。管理ツールとかプラグインとか全部入りで最新バージョンでセキュリティ設定もブラウザで可能で、ふむふむ接続はElasticsearch標準のHTTP認証だからクライアントライブラリもそのまま使えて...

とは言ってもインターネット越しだからEC2からEC2よりは遅いよね... え、ええっ!! 同等レイテンシー?!

はい

The Official Hosted Elasticsearch & Kibana Offering on AWS

on AWS なのです。Tokyoってのはつまり、AWSのTokyoリージョンのデータセンターのこと。EC2にがんばって黒い画面でクラスタ組んだのと同じ。うわぁ...

高いスペックを要求すればかなりの価格になりますが、単純にコンテンツの全文検索を速くしたいぐらいのニーズなら、最低スペックかその次ぐらいで十分で、そのあたりはお値段もかなりリーズナブルです。一番安いプランだと、たとえば月あたり1万円かけずに100〜200万件の全文検索を20〜80msでできる(ざっと見積りでそれぐらい)感じ。スロークエリのピーク負荷逃がし用のリードレプリカを1個つ増やすより断然安いですよね。

大規模なサービスの全トラフィックを集めるとかではなく、素朴に、コンテンツ検索でMySQLのフルテキストインデックスの代わりに使うとかなら、たぶんディスクは16GBもあれば十分。ユーザーの全行動追跡みたいなのは無理でも、直近3年のショッピングカートの出し入れ傾向ぐらいならぜんぜん余裕なんじゃないでしょうか。足りなくなったら上げればいいんだし。てか、これスペック上げるって時点でもう黒字サービスなはずですよきっと。というわけで、管理の簡単さもあって、AWSでスロースタートするのにとてもやさしいサービスだなと思いました。

ちょっと微妙な点としては、メモリとディスクが別々に選べないってところです。まあ多分スケール単位が仮想マシンじゃなくて、ノードなんだろうな、ってことで難しそうですが、もしCPU/メモリ/ディスク/IOを細かく指定できたら、もっと価格に柔軟性が出そうです。

自分の場合、意味のあるデータとそれへの検索クエリに対して、あまり使わないけど入れとかないといけない眠ったデータが大量にあって、ああこれ、CPUとメモリをケチってディスクを大きくできたらなーってのがあり、今回はEC2の自作クラスタを使うことにしました。

逆にいうと、データの重要度に偏りがなくてメモリ/ディスクのバランスがマッチするなら、どう考えても Elastic Cloud でスタートするのまじでオススメ、ってことです。とくに受託でやってる人とか、黒い画面での管理じゃなくて、アカウントとブラウザのGUIで引き継げるからってことで、だいぶチャレンジしやすいんじゃないでしょうか。

まとめ

  • AWSのElasticsearch Searviceほど素のElasticsearchと違わない
  • クラスタ構築をGUIでできる
  • プラグインや管理ツールが標準で入ってる
  • 小規模(100万件程度)で使うならすごくリーズナブル
  • 画面があるので引き継ぎやすい
  • クラスタAWSの中にある
  • さすが本家の公式

毎日SQLのパフォーマンスに苦しんでいる人、Elasticsearch チャレンジしてみてはどうでしょう?

え? トライアル期間が14日しかないのに習得するのはつらい? いやいやAWSなら t2.micro を1年使えますよね。てか、技術的に学びたいだけなら、zipで落として自分のJavaで動かせばいいんですよ。クラウドにしかないサービスと違って、これ基本OSSですよ。それ済んでからの14日トライアルぜひ。

PHPのarray操作はどれが一番速いか

なになに

けど配列のフェッチと新しい配列への格納でPHPオペコード増えるし、組み込み関数のほうが速いんじゃないの?

検証してみた:

> php -d memory_limit=-1 array-spped-test.php

Ginq + Closure: 782.2070ms x1.00
Ginq + function: 785.6706ms x1.00
array_map + Closure: 99.5564ms x7.86
array_map + function: 67.2468ms x11.63
foreach with key: 52.4326ms x14.92
foreach without key: 46.9100ms x16.67

array_map と foreach でだいたい2倍差。PHPは配列を操作するオペコード増加ぶんより、関数を呼ぶほうがずっと重いようです。で、関数よりクロージャーのほうがさらに重い。

で、それらに比べて高級なライブラリは、もっと違うオーバーヘッドがかかるので10倍とか変わってくる、と。PSRでコレクションAPIインターフェースの標準化っていう考えは、ちょっとアレですね。そこは性能差が出すぎるから微妙って感じ。

いや、だからって Ginq みたいなのが役立たずかってことはなくて、遅延とかバッチとか yield な感じのイテレーションでは大事ですよ。あと、100件ページに出す程度なら誤差の範囲ですよ。こんだけ高級なのに、100万要素で1秒以内なら、十分じゃないですかね。

ところで、array_map で確実な差が出る関数とクロージャー、Ginqでほとんど違わないのはちょっと不思議です。

ま、とは言っても自分は性能差関係ないとこなら普通に

<?= Hoge::widget([
  'data' => array_map(function($e) use($nanika) {
     return $nanika->format($e->hogefuga());
  }, $rawData),
]) ?>

とかやりますけどね。ただ、foreach より array_map のほうがカッコいいって言っちゃう人の持ち点はこれでひとつ消えたな、と。

AWS Elasticsearch Service を IAM ロールで認証する

Elasticsearch Service を使おうと思ったら、VPCでセキュリティグループに入れるのができないみたいで。無制限かIPで制限がIAMロールか... HTTPのAPIなのでどうやらS3やDynamoDBみたいに使うものってことらしいですね。

Signing an Amazon Elasticsearch Service Search Request — AWS SDK for PHP documentation

AWS SDKのこれを使えというやつはPSR-7のRequestインターフェースを想定しているので、本当にIAMの認証が通るか試してみました。

Credentialsがハードコードなのはダメって言われてるので、じっさいはdotenvとか使いましょう。

それにしても、もっとこう生curlとか古いGuzzleとかの勝手なやつでもいける形にはならなかったのかな、って、SignatureV4::signRequest() の中見たら、おおぅ、そりゃたしかに RequestInterface みたいなやつじゃないとダメだわこれ、ってなりました。

世の中PSR-7以前はもうレガシー扱いか... Guzzle を 6 に上げると Codeception が 2.1 じゃないとダメでいろいろ巻き添え。最新を追い続けられるようメンテしてないプロジェクトだと、こういう新しいサービスをぱっと使うのがホント難しいですね。

PHPカンファレンス福岡2016雑感

PHPカンファレンス福岡大会 2016 に行ってきました。

phpcon.fukuoka.jp

今年はPHPカンファレンスが日本国内で年4回開催されるという、前代未聞の年となりました。

また、2016年は、PHP5.1.2という重要なマイルストーンのリリースからちょうど10年という時が経っています。

5.1.2というバージョン番号は、PHP5対応のOSSの多くが、最低サポートするバージョンはここだよという基準として、もっとも多く採用していたバージョンです。たしか、各LinuxディストリもここをPHPの最初の5系として動き出したような...

最初のPHPリリースからみると約20年、そう考えるともう、PHPの歴史のうちほぼ半分が、PHP5が主流だった歴史なわけです。PHP5への転換から10年の節目で、これだけPHPカンファレンスを開催したいと考える地域が増えたのは、本当にPHPが良くなっていった10年だったんだなって、感慨深くなりますね。

あーあー校長先生の挨拶でした。つづきましてー

いやまあ、そんなのもあってですね、今流行りの10年やってわかったことネタでちょっといちびってみました。タイムテーブルにはないけど確実に懇親会LTはある、と見込んで仕込んできたネタがこちらになります。

あくまで夜のやつですからね、お酒入ってからのやつですから... あ... ええ、いろいろすんません。

昼間のちゃんとしたやつはスライドまとめを見て下さい。

techstars.jp

聴講して印象的だったのはロリポップでした。

やっぱり、PHPを積極的に採用していったレンサバの中の人はすごいって感想です。 ロリポを使う人とロリポを使わない人とロリポを作っている人の関係って、じつはPHP文化に 相似なのかもしれないな、共用やPaaSも見逃せないぞと思いました。

フレームワークについては、福岡という土地柄で、やはりCakePHPが目立ちました。 CakeはPHP4時代との互換を重視しての2へのメジャーバージョンアップがあったぶん、今っぽいMVCになるのがもっとも遅かったフレームワークと言えます。ので、以前からPHP5.1以降に登場したフレームワークを使っている自分のような者にとって、ちょっと物足りなかったかなと感じました。まあ、このタイミングだとどうしても、2までと3との違い重要なのでしょうがないんですけどね...

次回あたりは「もう全員3にしましたよね、CakePHPも他の自由にOOPできるフレームワークと足並みが揃いました、じゃあこの次はSOLIDをふまえてパッケージ原則ですが...」「私は、今のCakePHPの方が何か赤い宝石のアレよりも大規模エンプラへの耐性が高いのではないかと感じ、これが本当なら歴史的に感慨深いことで...」みたいなぶっちぎりのをやってくれるセッションが1つぐらいあってもいいかなと思います。

注目のPSR-7について思うところは、また時を改めて。

質問タイムに質問する人がいつもの面々で、それぞれ自分の担当って感じのところで質問を出してくれていいなあって反面、初参加の人ももっと質問していけたらなとも思いました。発表慣れしていない人の練習の場が大事というのはたしかで、もしかしたらそのついでに、「質問慣れをする機会」というのはあってもいいんじゃないかとか思ったり。どうやったらいいのかってアイデアはないですが。

今回の改善点:

去年は、前泊と2日目を別のホテルにしていたら、2日目のホテルのチェックインが遅れてキャンセルされ、宿がなくなる(しかもネカフェさえ満室)という事態に陥ってしまいました。今年は金曜日からの2連泊でホテル予約し、懇親会後の安心感を確保しました。

今回の課題点:

前夜祭終わりの時点では問題なかったのに、翌朝、寝る前より激しい酔いに襲われました。単純に飲み過ぎたわけではないはず、だったら夜の時点でそれはわかってるはず...と分析してみたところ、もしかしたら、新大阪を出発するとき食べた100倍カレーが、胃粘膜にバックドアを作ったのではないかという可能性が考えられました。(心理的に)再現困難なため検証できていませんので、この不具合を再現できる方がおられましたらぜひお知らせください。

ウコン重要。

反省点:

今回は自分で行こうと思ってた店には運悪くことごとく行けず、 なりゆきで行けるラーメンに流れてしまった(それはそれで美味しかったけど)のが心残りでした。

さ、次は7月16日、関西の番です。折り返しからの後半戦、盛り上がってまいりましょう。(告知)

conference.kphpug.jp

歴史的経緯によりこのメソッドはモテない (PHPカンファレンス感想)

10月3日に行われたPHPカンファレンス2015に行ってきました。で、いいかげん蒲田グルメレポート「みんなPHPカンファレンスに行くべき、なぜならメシが美味いから」とか書かなきゃと思っていたけど、変えることにします。

スライド公開後、残念ながらとても悪い評価を集めてしまったものがありました。

PHPer女子が語る2015!こんなコードを書くヒトはモテない〜コラボ編〜@PHPカンファレンス2015 #phpcon2015

自分も、他に素晴らしい話が数多く出た中、申し訳ないけど自分の中で上位には入らないなとは思う発表でした。ただまあ、経験を積んでいってくださいというだけで、そこまで問題視すべきことじゃないと思っていました。

が、あまりにもあまりにも... 面白くないならスルーでいいのに、なんでわざわざ食ってかかるかなぁ、って Twitter を眺めてて... 当事者にとってすらそこまで必要ない勝手なアレかもしれませんが、いま蒲田グルメよりこっちの気持ちのほうが大きいので。

というわけで、モテの歴史的経緯からきちんと分析してみたいと思います。

「モテる」ネタのカンブリア爆発

オムライスが食べられない女、おぼえていますか。モテる技術ネタの第一次ブームはそこにさかのぼります。

youpouch.com

この記事は大ブームとなり、さまざまなパロディが作られました。

4年前、みんな若かったのかな...

当時はパロディーで、モテるという謎の価値観を積極的に否定してウケをねらうものでした。

当事者たちはすぐに飽きてやめてしまったけれど、この影響はあとでじわじわ効いてきます。

図らずも「モテる」が定着

何かと「モテる」を使って、まだ自分の技術をやっていないエンジニアに対する煽りを交えたタイトルが出現しはじめます。

オムライス以前から時代を先取ってきたのもありますね。

まあこのあたりは、モテるモテないといったユルいタイトルに反して、そこそこハードな内容を出すという、ギャップを楽しむものでした。

ソーシャルに浸透

そうこうしているうち、どの言語を使えばモテるといった言い方で、自分のいる泥くさい現場に比べて華やかな技術はうらやましい、不純な理由をつけてでも別の技術を学ぶモチベーションを持ちたいといった気持ちを、個人個人が個別に発するようになっています。「〇〇を使えばモテる」と。

そういうおふざけを、みんなやっているわかりやすいプロトコルとして、いわゆる非モテとセットで連想されがちなエンジニア界隈が受け入れてしまった。

といっても、それがまだ明らかに冗談であるとわかる関連付けであるうちはまだ、ギリでセンシティブな問題とは言えなかった。

池澤あやか / いけあや on Twitter: "私もRubyでモテる女子を目指します。RT @endoyuma: Rubyをやるとモテるよ!逆にRubyをやっててもモテないエンジニアはもうダメだよ!って言われたから俺はまだ成長の余地を残している"

なにか様子が変わってきます。

仮想概念「モテる」のリアリティ

まったくの男性社会、むしろ異性なんて興味ない、と言える技術の畑だからと、言う方がだんだん麻痺してしまうと、そこに接しているそれほどでもない世界に影響を与えてしまいます。

遠くの島にCSS Niteが見えます。その一つ手前にはWordCampがあります。さてそこまで来ればPHPカンファレンスは同じ会場です。

そういう意味で、プログラム言語の中でもPHPJavaScriptには、まったく色気のない安心できる世界よりはまだ、いわゆるリア充との接点が広い文化がありました。PHPはとても大きなグラデーションで、場合によって明らかに冗談なものが、ふとしたひょうしに現実になってしまいます。

そうして、身内として過去の文脈を共有しない人にまで広がると、意味の拡大解釈が起こっても不思議ではありません。イケメンや壁ドンと同じです。モテるが100%冗談と言えなくなってしまう。まだまだネタ扱いとはいえ、モテがずいぶんと現実の側に歩み寄ってきました。

それで初心者はROMっとけはどうなのか

たしかに、空気よめない「モテる」はちょっと変な感じです。でも、これまでの歴史的経緯を知る人が、経緯も知らずに使う素人は何も言うな、というのは「初心者はROMっとけ」というのと同じです。これマサカリの中でもいちばんタチがわるいやつですね。

まあもういいかげん、ポリティカルコレクトネスがどうとか、何度かの炎上で痛い目見たとか、ドラ娘がいなくなったとか、いろいろあっておじさん連中は疲れていて、以前良かったことも今はとにかくタブーだからダメダメダメダメってなっています。けどそんなの知らない子だっているんですよね... 新しい人に対してもっともオープンなコミュニティだからこその話。

モテないはセクハラなのか?

中には「モテない」が主題になってしまったスライドを見て、セクハラだとツイートする人もいます。けれどちょっと待って下さい、セクハラというのは、たんに異性間トラブルというだけでなく、その根底には、マジョリティの無神経という本質があるものです。

そもそも、大きく男女に分けると、みなさんのいるエンジニア界隈はやはり男性がマジョリティです。男女の強弱関係ははっきりしています。

マイノリティである女性が、より強い立場の男性に対してセクハラというのは少しおかしいように思います。恋愛でいえば女性がマジョリティになることもあります。その文脈でモテないと言われれば、それは、恋愛マイノリティへの攻撃になると、みなさん肌感覚でなんとなくわかるでしょう。けれど...

それみたことかやっぱり女だ、それみたことかやっぱりPHPだ、と、スクリーンの向こうに人間がいることを忘れて、自己の承認要求を満たすために弱い方の過ちをネットで責めようとする気持ち。そのほうがむしろ、構造的にみて、ハラスメントとされる現象になります。(もちろん、適切な批判なり個人としての好き嫌いをツイートするのはこれに含みません)

マジョリティであるがゆえに、マイノリティに対するその力の大きさを自覚しなければと、自分も男性としてそう思います。

何がいけないのかポイント抽出

1

女が男をばかにした、として不愉快に思う人がいました。が、その不愉快さは、ハラスメント問題ではなく、あれよあれよと「のび太のくせに生意気だ」という暴力になりかねません。こうなることを予想して、弱者になりうる仲間を守っておく知恵が働かなかったことが残念でした。

2

「モテない」なんて言ってもそれがただの煽り脚色となるような、濃いギャップのある内容であればまだ救われました。その意味で、2014年のものは結論があったけれど、2015年バージョンは本当に言いたいことが抜けていました。お祭りを盛り上げたいと「モテネタでまたやってよ」に応えることを目的化してしまい、それを大真面目にやってしまった。自分の中の、エンジニアとしての本当の目的を忘れていたのではないかと思います。人のためにがんばりすぎやねん。

3

よくある悪ノリと同じとは言えなくなる要因がもう1つありました。LTのタイトルとして公式にパンフレットに刷り込まれていて、スポンサー企業とのコラボ企画であったこと。公式、つまりその場を仕切っている最強のマジョリティが認めたことになってしまった。こうなると、外から見たとき、ハラスメントのマジョリティー/マイノリティー関係が逆転する可能性があります。

とはいえ

エンジニアはイベントのプロではないのです。世代交代しながらイベント運営のクオリティを維持していくのは、本当に難しいです。その点は、自分も関西カンファレンスの人として、痛感します。

仲間としてぶっちゃけた気持ちを言うなら、これまだ、当日参加している人が言うならいいのですが、参加せずわかったような批判をする人には「まあ落ち着けや、おまえらPHPerちゃうし直接関係ないやろ」と。みなさん、本当の問題じゃないことを、さも問題ありかのように騒いで、楽しんでんじゃないかって感じの上司/代理店/顧客の姿を思い出してください。

どうでもいいことがふくらみましたが、ホントに言いたい社会的な視点に話を戻すと、ようは、おまえらが作ってきた道なんだから、若者が通ってしまうのは仕方ないだろ、知らんならROMっとけってのは、マサカリじゃなくて老害って言うんだぜ。ダメって言うなら歴史を検証してちゃんと伝えてあげる人が一人ぐらいいたっていいんじゃない。

今後どうすればいいか

モテで煽ったわりに面白くなかったことが良くなかったと思うので、いちばん足りていないのはおそらく登壇者のお笑いのスキルでしょう。スキルアップのために、ぜひPHPカンファレンス関西に勉強しに来てください。

な、おっちゃんモテそうやろ。

↑ お笑いのスキル

はやいで! つよいで! ワテらのPHP!! #phpkansai

この記事は「 PHPカンファレンス関西2015 」の リレーブログ のエントリーです。

昨日は、@aa7th さん PHPとScalaと私 #phpkansai でした。

このエントリーのタイトル、「はやいで! つよいで! ワテらのPHP!!」というのは、もしかしたら今年のPHPカンファレンス関西のテーマになるかもしれなかかった文言です。これ結局は採用されず、今年は「テーマなし」ということでボツになりました。

が、こいつが出てきたときの空気感がすごく良くて忘れたくなかったので、こうして残しておこうと思いました。関西人の冗談みたいな文言ですが、これ実は今のPHPコミュニティにとって、とても大事なメッセージを含んでいると思うのです。まじで。

  • はやいで!
  • つよいで!
  • ワテらのPHP!!

では、ひとつひとつ解説していきましょう。

はやいで!

速いといえばPHP7ですよ。

ausweb.com.au

これまでも、PHP4から5の間で、また、PHP5.3から5.6の間でも、ものすごく高速化されてきました。HHVMなんて別の処理系もあります。Wikipediaを爆速にしたことで有名ですね。実は今のPHP処理系は、インタプリタとしてはかなり速い部類になります。

とはいえ、HHVMまで行くとさすがにちょっとハードルが高かったんですが、これからは、それ相当の速度がなんと、PHP7という「ふつうのPHP」で得られるんです。

また、仮想マシンが一般的なWebの言語にあって、Phalcon という「フレームワークコードがほぼネイティブ」という速さへのアプローチもあります。ReactPHP という、Node.js のような非同期IOを実現することで、裏方の処理系のパフォーマンスを高めるアイデアもあります。

いかに早く作れるかというのもまた、PHPがこれまでWebで活躍してきた理由のひとつです。近年、エンタープライズ指向での用途にも使えるようになったとはいえ、当初 LAMP という言葉が意味していたこと、その中にPHPがいたことは、とても大事なことだと思います。

今回のカンファレンスでは、基調講演にPHP7のお話があります。Phalconのセッションも設けています。自分個人としては、開発の早さ=RAD (Rapid Application Development) の視点から、フレームワークトラックのうち1セッションを担当させてもらいます。

つよいで!

繰り返し言っていることなんですが、PHP はリクエストごとにクラス定義すら最初から読み直し、終わったら全部捨てるんですよ。それがマトモな速さで動くんです。Webリクエストはぜんぶ別のプロセス空間です。ここ、強さの秘訣ですよね。

はじめから完全分離されているということは、サーバを簡単にスケールアウトできるってことです。global使ってようが、static変数使っていようが、そいつらも分離されてるんですよ。この、ラフでもタフというのは、まぎれもないPHPの強さです。

また、ここ数年で強力なツールがどんどん登場しています。PHPUnit はもちろん、Composer, PhpStorm... ライブラリなら SwiftMailer や Guzzle、フレームワークもさまざまな用途に派生し、どんどん洗練されています。その裏には、PSR という強い実効力のある標準化機構があったりします。個人的には、型をベースに静的解析できるLLだという点で、LLで堅実なプログラムを書くならPHPは最強なんじゃないかと思っています。

セキュリティ面でも、いっときは「たとえばPHPを使わない」と言われたこともありましたが、今では、もっとも叩かれて鍛えられたセキュリティ意識を持つ文化になっているんじゃないかと、個人的に思っています。Webアプリケーションのセキュリティに関して、もっとも見識のある層の方々からの関心を集めているのは、間違いないと思うのです。

カンファレンスのセッション内容としては、フレームワークだけを特集するトラックを設けています。強力なモダンフレームワークの世界を楽しんでいただければと思います。セキュリティについてはなんと2セッションあります。CodeceptionやCI(継続的インテグレーション)の話題も楽しみですね。

ワテらのPHP!!

最先端ではどんどん速く、強くなっているPHPですが、そのいっぽうで、PHPはごく一般的なWebエンジニアから見て、けして遠い存在ではありません。Webの開発に携わる人々にとって、PHPはもっとも親しみのある言語のひとつです。

PHPは主に、Webのサーバサイドの最前面に立つ技術です。フロントエンドの人との関係もとても深いでしょう。Webデザイナーが覚えたいプログラム言語ナンバーワンかナンバーツーは、なんといってもJavaScriptPHPですもんね。

開発とは関係のないWebのユーザーにとってもそうです。FacebookWikipediaも、みんなPHPのおかげさまです。なんだかんだ言いながらも、みんな日々、WordPress で公開される記事を読んでいますね。いまPHPは、Webになくてはならない、みんなのPHPです。

いまだに、まだドジっ子だった頃の癖が出るかもしれません。それもまた、みんなで「あるある〜」と共感できる愛嬌ある部分なのです。ほら、配列と辞書がごちゃまぜとか、文字列を数値計算できちゃうとか、なんかかわいいじゃないですか。(で、それは案外実務で便利だったりすることの方が多い)

カンファレンスのセッションには、PHPに限定した話のほかに、フロントエンド、クラウドアクセス解析、プロジェクト管理といった、他の分野に広がっている話題も満載です。また、PHPカンファレンス関西は参加者全員にとって、「ワテらの」カンファレンスです。上級者向けだけでなく、初心者向けセッションやIDEとGitの体験ハンズオンなども、重要なテーマとして盛り込んでいます。

ともすればそのドジっ子なところを揶揄されがちなPHPですが、そんな声はものともせず、PHPPHP文化の「はやさ」「つよさ」を、誇りを持って「これがワテらのPHPじゃ」とアピールできる場を作りたい。そんなPHPカンファレンスを関西で提供していきたい。テーマ案「はやいで! つよいで! ワテらのPHP!!」はそんな思いから出てきました。

ま、ボツってるんですけどね(^^; いいじゃないですか、気持ちさえあれば、体裁なんて。

※ @shin1x1, @aa7th, @omoon とのミーティングと肉に感謝。

さあリレーブログでどんどんテンション上げていきましょー! 次は @slywalker さんです。 → 忍び歩く男 - SLYWALKER あしたもみてね (夏休みこども劇場)

IntelliJ でブランチ間の差分と作業ブランチ全体のコードレビュー

IntelliJ でブランチ間の差を見たいときは、まず基準ブランチをチェックアウトしてからここ

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それぞれのコミットの diff を見て、トータルでどれだけ違うかは、Log を Diff に

f:id:tanakahisateru:20150328011859p:plain f:id:tanakahisateru:20150328011919p:plain

これで HEAD 同士の比較です。

でも

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master が他のプルリクエストをいろいろマージしていると、作業ブランチはあまり変えてないのに、master が進んでいくせいで差がどんどんできてしまいます。ここまでのスクリーンショットでもすでに README.md が master 側で進んじゃってますね。

そうなると時間が経つほどに、ブランチ HEAD 同士を比べることと、作業ブランチのコミットを累積してどんな作業をしたのかを見ることは、意味が違ってきます。数人で分担作業したものがリリース直前になると、個別のブランチよりもマージを進めている master の方が多くのファイルを変更しちゃってるなんてことが多々あります。

そこで、作業ブランチのコミットの累積をコードレビューする方法を考えます。まずは作業ブランチの base を探します。たぶんその作業は master からブランチしてますよね。じゃあ、Changes パネルのごちゃごちゃした Logs タブに master と対象作業ブランチだけを表示 (補完ありでブランチ名を2つここに書く) しましょう

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それから、2つが合流する共通のコミットを探します

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で、こいつをチェックアウト。この状態で最初の方法で作業ブランチと Compare すると、 作業ブランチでやった変更だけ を確認できます。

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GitHub とか Bitbucket みたいな、プルリクエストのコミット群のサマリーを見ることができるサービスを使ってればいいんですが、そうでない場合、マージしたいブランチで変更のあった行がどこなのか調べるのはちょっと面倒です。まあ、GitHub の プルリクエストページでも Unified Diff になっちゃうので、ソースコードの全体像を見ながらレビューしたいと思っても難しいですね。

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ようは、IDE のパワーを使える状況で、かつソース全体をレビューできるこれが便利なわけですよこれが。